麻酔科
近年では手術件数が増加傾向にあり、麻酔科管理症例数は外科、整形外科を中心として約500件となっています。
まず、患者さんごとに、これまで経験のある病気や怪我、飲んでいるお薬などを情報収集してから麻酔法を計画します。「この手術ならこの麻酔」と画一期に決めないのは、患者さんの健康状態が異なれば同じ手術をうけるのであっても、最も安全な麻酔法も違って当然だからです。当院ではご高齢の患者さんが多いことから、合併症が多かったり、その程度が重かったりと麻酔管理が難しいことも少なくありませんが、安全で患者さんへのストレスが少ない麻酔を、と日々考えています。
「麻酔」は大きく分けると2種類あります。
1.全身麻酔:意識がなく、眠った状態になります
《1.麻酔を始めます》
鼻と口にマスクを当てて酸素を吸っていただきます。気持ちをゆったりとさせてゆっくり呼吸をして下さい。
意識をなくすためのお薬を点滴にいれると、いつの間にか眠ってしまいます。
《2.呼吸のチューブなどを挿入します》
酸素の通り道を確保するために、口や鼻からチューブを挿入します。その際、弱い歯やグラグラしている歯があるときには、 歯が欠けたり抜けたりすることがありますので、手術前にあらかじめお申し出下さい。
《3.手術が行われます》
手術中は、担当麻酔科医が患者さんの状態と手術の進行状況をみながら、麻酔の深さや人工呼吸の条件を適切に調節して、 最適の麻酔状態を保ちます。
手術が終了すると同時に、麻酔薬の投与を中止します。 目が覚めるまでの時間は、手術の種類や患者さんの状態によって異なります。 目が覚める兆候がみられましたら、声をおかけしますので、それが分かったら目を開けたり、手を握ったりして、 目が覚めていることを伝えるようにして下さい。
なお、口から喉にいれたチューブを抜いても、しばらくの間は声が出しにくいのでご辛抱下さい。
患者さんの血圧や脈拍、呼吸状態、血液の酸素化に異常がないかどうかを判断し、病室にベッドでお帰り頂きます。手術前に喫煙されていた方は特に、痰がたまりやすくなり、肺炎や、 肺がつぶれた状態になる無気肺といった肺の病気を招いてしまうこともあります。 予防のために、深呼吸や咳をしっかり行うようにして下さい。手術後の痛み止めの注射やお薬はあらかじめ準備されていますので、痛みを我慢しないで遠慮なく主治医や看護師にお伝え下さい。
2.区域麻酔:意識がありますが、痛みを感じにくくする注射をします
効き目に個人差があるため、全身麻酔を途中から追加することもあります。また、区域麻酔だけを予定していても、ご希望があれば鎮静薬や麻酔薬によって眠ることが可能な場合もあります。麻酔科医にお声掛けください。
《硬膜外麻酔》
硬膜外麻酔は、脊椎(背骨)の中にある脊髄のすぐ近くの硬膜外腔という場所に、 麻酔薬をいれて、手術部位の痛みを無くす、あるいは軽くする麻酔法です。
手術をする所に合わせて、背中のどこから麻酔薬をいれるかを決め、カテーテルという細い管をいれます。 このカテーテルから麻酔薬をいれて麻酔を行います。カテーテルをいれるときには、背中をネコやエビのように丸くして下さい。 消毒の後、背中に痛み止めを注射しますので、最初だけご辛抱ください。
手術後も、手術のときにいれたカテーテルから麻酔薬をいれることができ、痛みを抑えるのに大変有効です。 数日間、痛みを抑えるのに用いられたカテーテルは、必要が無くなれば抜きます。
《脊髄くも膜下麻酔》
脊髄くも膜下麻酔では、細い針を使って脊髄液が満たされている場所に区域麻酔薬をいれ、脊髄を麻痺させます。この麻酔が効いている間(1~6 時間)は、感覚が無くなり、足を動かせなくなります。体位や消毒方法、最初の痛み止めの注射は硬膜外麻酔の場合と同じ方法です。 麻酔の効き目を確かめてから、手術が始まります。手術後、まれに頭痛が起こることがあります。
《末梢神経ブロック》
神経の走行に沿って麻酔薬を注射し、その領域の痛みをとる方法です。 麻酔の範囲は、硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔より狭く、必要最小限にとどめられることが特徴です。
末梢神経ブロックのみでも短時間の手術を行うことができますが、全身麻酔と併用して手術後の痛み止めにも利用します。
ほとんどの患者さんは生まれて初めての経験で、麻酔に関しては不安や恐怖も抱えておられると思います。心配なことや気になることなどあれば、担当医師や看護師に声をかけてください。安心して麻酔を受けていただけるように、説明させていただきます。
【担当医師名】 | 【卒業年次】 | 【専門医・認定医等】 |
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楠田 理絵 | 平成17年 | 日本麻酔科学会:麻酔科指導医 臨床研修指導医 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア講習会修了 医療系大学間共用試験実施評価機構:共用試験医学系OSCE評価者認定講習会修了(救急) |