アイデア発案者 燕労災病院整形外科医長 堀米 洋二
開発連携企業 燕市医療機器研究会(新潟合成株式会社、有限会社エーワンプリス、JMR株式会社)
1 アイデア発案の経緯(堀米医師)
整形外科では、骨折に対する治療をよく行いますが、その原則は「整復(骨折部のずれをよい位置に戻すこと)」「固定(骨折部がずれないように安定させること)」「リハビリテーション」です。骨折に対して手術を行う場合、この内の「整復」「固定」を達成し、円滑な「リハビリテーション」につなげることが目標となります。
手術の際に、骨折部を「整復」し、手術中の一時的な固定をするためのローマン鈎と、最終的な「固定」のためのワイヤーを巻き付けるためのワイヤーパッサーという手術器械を用いることがあります。しかし、この二つの器械が、狭い手術創の中で、互いに邪魔をしてしまうことがあり、不便に感じていました。
そこで、ローマン鈎とワイヤーパッサーをひとつにまとめた新たな手術器機のアイデアを、医工連携の交流会で提示しました。
2 開発に至るまでの経過(燕市医療機器機研究会)
まずは、堀米先生より現行使用されているローマン鈎の使用方法をレクチャーいただき、不便に感じている点と要望のヒアリングを行いました。ヒアリング結果をもとに、可動部の手前を二股にして、間からワイヤーを通せるように本体内側に溝を掘りました(試作1)。堀米先生より試作1を評価いただき、患部を挟んで固定する部分の滑り止め加工の必要性や溝の長さの調整、表面の仕上げ等の細かい修正点の指示をいただき、改良品を作製しました(試作2)。試作2を評価いただいた結果、改良前(試作1)の方が使いやすいという箇所もあり、試作1と試作2の折衷案で最終形状を決定しました。
完成品で強度試験を行い、強度に問題ないことも確認されたので、薬事申請及び意匠登録の手続きを行い現在販売に至っています。
3 開発製品(ワイヤーリングローマン鈎)について
開発した製品は、ローマン鈎にワイヤーパッサーの機能を持たせた「ワイヤーリングローマン鈎」です。
この製品を実際に使用することで、ワイヤーパッサーが不要となり、小さな傷で手術を行うことができるようになりました。また手術時間も短くできたことと合わせて、患者さんの体への負担を小さくすることができました。
ワイヤーリングローマン鈎では、金属製のワイヤーだけでなく、その扱いやすさから近年よく使用されている超高分子量ポリエチレン製ケーブルを骨折部に巻くこともでき、汎用性が高いものにできました。
4 医工連携に取り組んで
「ワイヤーリングローマン鈎」の開発を通じ、医工連携に取り組んだ医療スタッフ、ものづくり企業の声を紹介します。
堀米医師
自分が新しい手術器械を開発することになるとは、夢にも思っていませんでした。「こういうものがあったら便利だな」という漠然としたアイデアがあっても、それを実現するためにどこに相談したらよいのか、どのくらいの費用がかかるのかもわかりませんでしたし、医療機器として法律に則った承認を得るのは大変であるとも聞いていたからです。医工連携の取り組みのおかげで、「アイデアさえあれば製品になる」という実感が持てました。身近な整形外科医に製品を紹介したところ、ぜひ使用したいという声も聞いています。この製品が広く患者さんの役に立ち、開発に携わっていただいた企業にとってもプラスになってくれることを期待しています。
燕市医療機器研究会
(事務局:燕市商工振興課)
燕市医療機器研究会では、医療従事者の方々の業務負担軽減と患者さんへの負担軽減を第一に製品開発に取り組んでいます。今回作製したローマン鈎について堀米先生より、「ワイヤーリングローマン鈎を実際に使用することで、小さな傷で手術を行うことができ、また手術時間も短くなることで、患者さんの体への負担を小さくすることが可能となりました。」との評価をいただくことができ、嬉しさと達成感を感じています。医工連携のよい点は医師と企業が密に繋がるため、開発にもスピード感があります。引き続き医工連携を通じて皆さまの役に立つ医療機器の製品化を実現していきたいと思います。
5 製品問合わせ先(製造販売元)
ワイヤーリングローマン鈎 届出番号 15B1X10003000061
JMR株式会社 新潟県新潟市西蒲区大原3061
TEL:0256-77-8808 /FAX:0256-77-8809 /E-mail:info@jmr-lab.com